民事信託の基礎知識
信託を活用すると税金が発生するパターンとは?
家族信託を活用する際には、税金を考える必要があります。最終的な税務リスクは顧問の税理士や税務署へご相談ください。ここでは、一般的な信託に関する税金のお話しをしましょう。
信託財産に不動産が含まれていると、所有権移転登記が行われるため、登記簿に受託者の氏名が記載されます。しかし、登記簿上の所有者が形式上、受託者に名義変更がなされただけでも、税金が課税されるのでしょうか?
信託設定時における税金は二つの考え方があります。
①自益信託
まず、「委託者」=「受益者」が同一人物であるのかないのか、が問題となります。
「委託者=受益者」の場合には、受益者は利益を受けている訳ではないので、贈与税は課せられません。
②他益信託
委託者≠受益者の場合、つまり両者が異なる場合には、みなし贈与とみなされて贈与税が課せられます。
また、どちらの場合にも、課税されるのが、所有権移転登記の手続き時に発生する登録免許税です。
そして受託者への不動産取得税は、形式的な所有権移転のため発生しません。
同時に、委託者への譲渡取得税も利益発生が起こらないため課税されません。
では、受託者に課税される税金はあるのか?
それは、毎年1月1日の不動産所有者に課せられる固定資産税です。形式的に所有者になるため、受託者に固定資産税が課税されます。しかし、実質的には信託財産の中から実務として受託者が支払いをするため、負担者は信託財産から支払うケースが多いです。
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信託の変更をするときは? 契約信託を行った場合、委託者が元気な間に、生活環境や財産状況の変化があり、信託の目的や信託財産の管理方法などを変更したいと考える事もあります。
この場合は、「信託の変更」を行うことになります。「信託の変更」については、信託法の改正にも携わっておられた寺本昌広氏によって「信託行為に定められた信託の目的、信託財産の管理方法、受益者に対する信託財産の給付の内容その他の事項について、事後的に変更すること」と定義されています(同氏『逐条解説 新しい信託法』339ページ)。
法律の条文でいうと、信託の変更は信託法第149条に6パターンの方法が定められています。
まず、契約信託は、委託者・受託者で結んだ契約によって始まる信託であり、変更する場合は受益権を持つ受益者にも影響を及ぼしますから、委託者、受託者、受益者の三者間での合意が原則とされています。そして、例外的に三者間での合意が不要な場合が列挙されています。
(1)信託の目的に反しないことが明らかなとき
受託者及び受益者の合意
(2)信託の目的に反しないことが明らかであり、さらに受益者の利益になる場合
受託者の書面等による意思表示
(3)受託者の利益を害さないことが明らかなとき
委託者及び受益者の受託者に対する意思表示
(4)受託者の利益を害さないこと及び信託の目的に反しないことが明らかであるとき
受益者の受託者に対する意思表示
(5)上記以外にも、信託を行う際に特約として変更方法を定めていた場合
信託行為で定められた方法による信託は、委託者の想いを叶えるために行うものですから、信託の目的はその根幹をなすものと考えられます。
したがって、その目的に変更がない場合は、その他の部分を変更しても委託者の想いは叶えられると考えることができるでしょう。受託者は、財産の管理・運用を行っていますから、その管理方法等に変更が加えられると、管理の手間が膨大になってしまうなど不利益を被る可能性もあります。そして、信託財産からの利益を受けている受益者にとってみれば、信託の変更は自身の受益権に深く関わる問題です。このような観点から、信託に関わる三者の利益を害さない範囲であれば、変更の要件が緩められていると考えられます。
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委託者、受託者、受益者が死んだら? 信託契約における当事者が死亡した場合、誰が権利を継承するの?
信託契約には、「委託者」「受託者」「受益者」の3つの立場が存在します。そのため当事者が死亡した場合には、それぞれの定めに従って相続が行われます。
3つすべてに共通して言えることは、信託の契約内で、当事者の死亡時の次の継承者を決めてあれば、その内容に従うことができます。
そのため財産を継承させたい場合には、信託契約にその旨の内容を明記しておく必要があります。
立場別に見る「委託者」「受託者」「受益者」の権利承継者
まずは委託者が死亡した場合、委託者の地位が相続によって継承します。
そこで、以下のような文言を記載します。
(委託者の死亡後の委任者の権利)
第○条 委託者の死亡により、委託者の権利は消滅するものとする。しかし遺言による信託を行った場合には、相続人には委託者の地位は承継されないように信託法で規定されています。
そして受益者が死亡した場合も、委託者同様に、財産の相続人が受益権を相続することで受益者となります。信託契約内に明記がなければ、遺産分割協議で他の財産と同様に取得者や取り分が決められます。生前に受益者が相続人指定をしておくことも可能です。ちなみに、受益権の財産評価は、通常の財産評価と何ら変化はありません。したがって、不動産建物は固定資産税評価額、土地は路線価です。つまり、信託を活用することで直接的な相続税の節税には繋がらないのです。
最後に受託者が死亡した場合ですが、次の受託者を選任しなければいけません。信託契約内に選任方法が明記されていればその方法に従います。定めがない場合には、委託者と受益者が話し合い、合意のもとで新しい受託者を選びます。話し合いがまとまらない場合などにおいては、裁判所に申し立てをして選任をしてもらうケースも出てきます。
信託契約の終了を左右してしまう受託者選任の重要性
注意が必要なのが、受託者が死亡して1年間、次の受託者が選任されなかった場合、強制的に信託契約は終了してしまうということです。(1年ルール)
そして受託者の相続人は、受託者の地位を相続して承継することはないものの、新しい受託者が選任されるまで、信託財産を管理する立場にあります。
そのため信託契約を締結する段階で、さまざまな事情が起こった際の対処法を想定しておかなければなりません。
受託者が死亡した際、次は誰を受託者に指名するのかは最低限、決めておくべき事項になります。誰が先に亡くなるのかは、誰にもわからないことです。そこで、あらゆるケースを想定し、対応策として先手を打っておくことが信託契約の成功の鍵となってきます。
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