民事信託の基礎知識
家族信託を活用した場合の不動産登記
信託をする財産の中に不動産が含まれている場合の手続き
家族信託によって、不動産を信託財産に盛り込む場合には、登記簿(登記事項証明書)に「受託者」の名前が、管理処分者権限者として記載されます。
信託契約に基づき、「所有者(委託者)」から「受託者」への所有権移転登記手続きが行われます。
しかし、これは形式的な所有権移転といえるため、受益者が委託者である場合には、実質の財産権は移行していません。つまり「委託者=受益者」として締結された信託契約であれば、財産権が「所有権」から「受益権」という名前に変更しただけで、信託財産の帰属先に変更はありません。
信託契約時における不動産登記に欠かせない信託目録とは?
信託された財産である不動産の登記簿には、信託目録が必ず作成されます。
信託目録には、受託者が信託により、財産の管理処分権限を持つこと、そして信託で得た収益は受益者に帰属することが記されます。
受託者の権限だけではなく、信託の目的や開始・終了時期などの信託条項は、登記簿にすべて記載され、公示されることになります。
受託者にどこまでの管理処分権限があるのか?信託監督人などの同権利者が立てられていないのか?を不動産取引の関係者が確認できるようになっています。
このように信託条項には、詳細に決められた信託契約の内容が記載され、不正のないように配慮がなされています。ちなみに、信託条項に何を記載するのかは司法書士の判断によって分かれます。
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後見制度支援信託とは? 商事信託と民事信託は、必ずしも競合するものではありません。活用事例①の共有不動産の解消、活用事例②贈与信託の場合は、民事信託で達成できます。しかし、商事信託でしか実現できないものもあります。例えば、後見制度支援信託があります。ご紹介しましょう。
後見制度支援による信託を活用した財産管理の方法とは?
そもそも後見制度とは、法定後見と任意後見に分かれます。成年後見制度とは、認知症や知的・精神障害などによって本人に判断能力がない場合に、成年後見人を選任することで法律的に本人を支援していく制度です。
後見制度支援信託とは、上記のように支援を受けている方の財産管理を、信託という手段を利用して行うものです。
そのため契約や変更、解約などの手続きは、すべて家庭裁判所の指示に基づいて行われます。
本制度においては、本人が日常生活に必要とする金銭以外を、信託銀行などに信託として預けることで、後見人などによる財産横領を防ぐことができます。家庭裁判所への手続きが必要となる信託契約締結の流れとは?
後見制度支援信託を利用する際には、まず家庭裁判所への後見開始の申立てを行います。裁判所が当該支援信託の利用検討の余地があると判断した場合には、司法書士などの専門家を後見人に選任します。その上で、本人の生活や財産の状況をトータルに考慮し、専門家の後見人による検討・判断が行われます。
そして信託制度を利用すべき場合には、家庭裁判所へ作成した報告書の提出を行います。そして裁判所から発行された指示書をもとに、信託契約を締結します。
後見制度支援信託を利用することで防げる不正行為
親族後見人による、財産の使い込みは年々増加を続けています。平成23年~24年の計2年間では900件以上、被害総額は80億円を超えています。後見人によって財産を横領する事件が起きれば、財産を損なうという直接的な被害だけではなく、成年後見制度自体の信頼性が問われてきます。
しかし、後見制度支援信託であれば、信託契約締結後は、契約で定められた金額のみを、定期的に後見人の管理している口座へと送金します。そのため、日常的な支出のみを実質管理をする形になります。もちろん医療費などの予定外の支出があれば、裁判所からの指示を得て、契約内容を変更することが可能です。
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いまさら聞けない家族信託と民事信託、商事信託の違い 民事信託・家族信託・商事信託・個人信託・福祉信託など、信託にまつわる言葉が世間ではありふれています。
信託とは、財産の所有者(=委託者)が、信頼のおける人・法人(=受託者)に財産(=信託財産)を託し、定められた目的(=信託目的)に従って財産を管理・継承する方法で、
定められた受取人(=受益者)に対して財産が承継される仕組みになります。そして、家族信託とは、家族の財産を、所有者の意向に沿って家族や親族が受託者となって管理、処理を行うことから、通称、家族信託と呼ばれています。
近年、高齢者や核家族化の増加により、財産継承を円滑に行うための手段として注目が高まっています。
なぜならば、信託した後は、たとえ障害等によって判断能力が低下した場合でも、大切な家族のために財産を守ることができるからです。信託によって継承できる財産は、財産的価値があるもえ不動産(土地及び建物)、金銭や金銭債権、有価証券、動産などさまざまです。
平成18年に信託法が改正された重要なポイントとは?
もともと信託とは「商事信託」と呼ばれる信託報酬を得るための、営利目的で行われる信託が一般的でした。
そのため信託業法のもと、信託会社や信託銀行によって行われてきました。しかし、信託法は、平成18年12月に改正され、翌年9月に施行されています。
この改正により、営利目的でなければ、信託業免許を持たない法人や個人間においても、受託者になれるように変更がなされました。
それよりも以前からあったのですが、注目を浴びるようになったのが「民事信託」であり、さらにその枠内にある家族が受託者になるということに焦点を当てた信託が「家族信託」です。
「商事信託」に対して「民事信託」とは、信託報酬を目的としないため、信託業法の制限を受けずに信託行為が行えるのです。
大きく分類すると、商事信託と民事信託に分かれます。
さらに、民事信託を細かく分類すると家族信託・障害を持っている方のために活用するということで「福祉型信託」。個人が受託者になるので、「個人信託」などの呼び方が派生しています。
つまり、福祉型信託・個人信託・家族信託という呼び方が、それぞれ異なりますが、すべて「民事信託」ということです。
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