民事信託の基礎知識
どんな財産を信託することができるのか?
所有者が保有している財産は、固有財産と呼ばれます。
では、どのような固有財産が信託することができるのでしょうか。
原則として、“財産的価値があるもの”は、信託することができます。
①不動産所有権、借地権、動産(ペット)、金銭
*信託契約により、管理・処分権限が受託者へ移ります。
②上場株式、非上場株式、著作権や知的財産権
*財産権以外の、議決権や利用決定権は受託者へ移ります。
③債権(請求権)、将来債権(未実現の請求権)
信託することができないもの
次のものは、信託できません。
①生命、名誉
②債務、連帯保証(いわゆるマイナス財産は信託できません)
③一身専属権(生活保護受給権や年金受給権)
なお、注意点としては、信託契約書に銀行口座を記載される方がいらっしゃいますが、銀行口座は、預金債権です。通常、銀行の預金債権は譲渡禁止特約付債権になります。
したがって、預金債権は信託できません。
また、債務は信託できない財産ですが、別途、債務引受はできます。実質、債務を信託することと同じ状態にすることができます。
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登記の目的及び登記原因など 

委託者が信託を設定した場合
登記の目的:所有権移転及び信託
登記の原因:平成○○年○○月○○日信託
登録免許税:固定資産税評価額の0.4%
(平成29年3月31日までは、土地の信託に関しては、固定資産税評価額の0.3%)受益権の売買、贈与等した場合
登記の目的:受益者変更
登記の原因:平成○○年○○月○○日売買
登録免許税:不動産1個につき1000円信託が終了した場合
登記の目的:所有権移転及び信託の抹消
登記の原因:平成○○年○○月○○日信託財産引継
登録免許税:固定資産税評価額の2%
(ただし、信託終了時の権利帰属者が委託者の相続人である場合は、相続の税率を適用するので、固定資産税評価額の0.4%)
信託の抹消分は、不動産1個につき1000円信託財産を処分した場合
登記の目的:所有権移転及び信託の抹消
登記の原因:平成○○年○○月○○日信託財産の処分
登録免許税:固定資産税評価額の2%
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信託は遺留分が発生しない? 信託を活用した場合、遺留分は発生しない!と言われています。
しかし、遺留分留分に関しては、残念ながら現時点では答えはありません。これからの裁判の判例を待つしかありません。何故、見解が分かれるのかについて、それぞれの視点で説明しましょう。
遺留分にならない派
①信託法は、受益者の取得する受益権は「相続によるもの」若しくは「新たに債権を取得するもの」どちらかを選択できると規定しています。つまり、相続ではないので、遺留分は発生しない。
②民法は一般法であり、信託法は特別法なのですが、法律上は、特別法が優先するというルールがあります。したがって、信託法の規定に従うなら遺留分も発生しない。
③上記の考えに基づくと、相続ではないので、相続税が発生しないことになります。
国税局としては、相続人から「相続ではないので、相続税を支払いません。」と主張されると困ります。そこで、受益権の相続は、「みなし相続税」扱いに変更しました。したがって、国税局も相続ではないと認めている主張が成り立つので、遺留分は発生しない。遺留分になる派
①生命保険の判例と同様に、極度に侵害しているものは、相続人の正当な権利を妨害している。したがって、遺留分は発生するべきだ。
このような対立があります。ちなみに、個人的には、遺留分は発生する側に立っています。
例えば、父A、母B、長男C、次男D、孫E。
委託者A、受託者X、第一次受益者A、第二次受益者B、第三次受益者Cとした場合。
委託者Aが死亡した後の1番目の受益者Bが受益権を取得した段階でのみ、Dの遺留分減殺請求が認められますが、2番目以降では遺留分減殺請求は認められないと解されています。
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