コラム

様々な業種での家族信託活用方法
活用事例①共有名義の不動産対策に家族信託を利用する

相続トラブルに陥りやすい不動産の相続を円滑化させる

不動産を相続した場合、問題になるのは共有名義となっている場合です。共有名義の不動産においては、共有者全員が同意しなければ換価による処分ができません。共有者間でトラブルになっていれば、せっかくの遺産である不動産の有効活用ができなくなります。

 

さらに、共有不動産の共有者1名が死亡した際に、遺産分割協議が長引けば、手続きが面倒に感じられてしまい、そのまま放置されてしまうケースも少なくありません。

 

そこで、共有不動産を、共有者全員を委託者とし、信託財産として信託を設定することで、受益権を共有化させることができます。そのため共有者としての権利を持ちながら、運用・管理を受託者に集約させることで、円滑な遺産分割が進められていきます。

 

 

不動産が共有名義状態を回避できるメリットとは?

家族信託を活用し、不動産の管理処分権限を受託者に集約させることで、不動産の一本化ができます。この際に、受託者を一般社団法人にすることもできます。

 

仮に信託財産が賃貸マンション・アパートという収益不動産には、第一受益者を親(委託者)、第二受益者を相続人(受益者)としておけば、相続人が複数いる場合でも、賃料収入で平等に分配することが可能になります。

 

それぞれの相続人にとって大切な遺産を、誰もが納得のいく形で、資産活用できる方法といえます。そのため受託者が第三者でなく、相続人の中の1名であっても、「受益権」として、個々に権利を握っておけるという点で、相続時の共有名義トラブルは格段に減らせます。

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    金融機関は何故、家族信託に取り組むべきなのか?

    金融機関が取り組むべき理由は以下のように考えることができる。

    ①超高齢化社会が確実視される現代において、「お客様のニーズ」が高まっており避けて通ることができない。
    ②商事信託(信託銀行・信託会社)では対応できず、民事信託でなければ目的を達成できない案件がある。
    ③保険見直しのアプローチに効果的
    ④融資担当者のハウスメーカーや税理士開拓の新たな切り口になる!(土地信託など)
    ⑤信託口座の開設により、預金を集めることができる!(金銭信託)
    ⑥信託活用によりアパートローンの借り換え需要の発生
    →司法書士法人オフィスワングループが登記対応可*

     

    では、実際金融機関が家族信託と向き合う場合に、考えられるのは2つの場面です。
    ①既存の担保不動産が信託された場合
    ②新規で受託者に融資をする場合

     

    まず、1つ目は、既存担保不動産の信託した場合は、受託者への債務者変更を行います。これは、ローンの債務引受です。

     

    次に、2つ目は、新規の信託不動産への融資です。これは、受託者との金銭消費貸借契約を行います。

     

    金融機関が心配する点として、担保回収の問題があります。この点、金融機関にとってリスクはありません。信託財産の名義は、受託者に変更されますが、所有者が受益者になるだけであり、受益権に対する強制執行は可能です。したがって、債権が害される恐れはありません。

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    遺言信託と遺言代用信託の違い

    「遺言信託」と「遺言代用信託」って同一のもの?相違点は?

    同様サービスの別名かと思われがちな「遺言信託」と「遺言代用信託」。名称は似ていますが、内容は大きく異なっています。

     

    まずは遺言信託についてですが、これには2つの形態が存在します。
    別のページで申し上げたように信託銀行が提供している遺言の作成支援や保管サービスである遺言信託と、遺言による信託の2つになります。

     

    1つ目は、遺言サポートとも呼べるサービスです。遺言内容の実現に向けて信託銀行がサポートを行います。一般的な遺言書におけるサービスをベースにしているため、遺言書以上の何かを行えるものではありません。

     

    2つめは、遺言により信託の設定を行うものです。委託者の死亡に伴い、信託財産が受託者へと信託されるものです。

     

    これに対して遺言代用信託とは、信託契約を締結し財産管理を受託者が行い、委託者が死亡した際には受託者が、指定された受益者へ信託財産を引き継ぐ仕組みとなっています。受益者が最終的に財産を引き継ぐので、遺言と同様の効果をもたらします。

     

    したがって、遺言代用信託と呼ばれています。

     

     

    葬儀費用などにおいても口座凍結の影響を受けない遺言代用信託

    根本的にサービスの内容が異なる2つの信託。

    上記のサービス内容の相違点を比較してみても、遺言代用信託の方が、相続手続きがスムーズかつ簡単に行えることがわかります。一般的な相続において、遺産分割協議などの話し合いや手続きが完了するまでは、使用用途が生活費や葬儀費用などであっても、口座凍結によりお金の引き出しができません。

     

    しかし遺言代用信託であれば、契約時から信託財産になるので、遺産分割協議など必要はありません。したがって、いつでも受託者が引き出し可能になります。遺言の場合に生じてしまう執行までのタイムロスが発生しないメリットは大きいと言えます。

     

    また遺言の内容を本人が勝手に書き換えており、相続時に初めて後継者が変更点に気付くという事態にも陥りません。

     

    遺言による信託では、受託者として指定した人・機関が就任してくれる保証がありません。しかし遺言代用信託であれば、委託者が生前に行う信託契約の締結時に効力が発生しているため、そのようなリスクの心配はありません。